なれはき

なれはてのはきだめ

気にしてもいい

 気にしたくないのに、気になってしかたない。気になってしかたないけれど、気にしたくない。

 そういうことって、ありませんか。

 わたしは、いっぱいあります。

  • どうして元恋人にフラれてしまったんだろうか
  • どうしてバイトに採用されなかったんだろうか
  • どうしてメールの返事がこないんだろうか
  • あの人はわたしのことをどう思っているんだろうか
  • あの人に嫌われたらどうしよう
  • あるいは、もうとっくに嫌われていたらどうしよう
  • 失敗したらどうしよう
  • 怒られたらどうしよう
  • これから生きていけるんだろうか

 どうしてだろう、どうなるんだろう。挙げればキリがありませんが、考えてもしかたのないことがほとんどです。だから「気にしたくない!」と強く思うのですが、気になってしまう。

 しかも「こんなこと気にしているわたしはダメなやつだ」という自己嫌悪まで、おまけでついてきてしまう。

 気にしないようにしよう、と思って、気にならなくなるものではありません。

 ネットで調べると「気にしたくないことを気にしないための方法」みたいなものも、いろいろと見つかります。でも、あんまり役に立たないことが多い(少なくともわたしは)。

 あるとき、こんなことを言われました。

 それで、少し気持ちがラクになったんです。気にしてもいいのか、って。少なくとも「こんなこと気にしているわたしはダメなやつだ」という気持ちは、少し薄れました。

 だって、気になるものは気になるんです。しかも、誰も「そんなこと気にするな」と “ 命令 ” してきているわけじゃない。わたしがいろいろなことを気にしたからといって、それで直接的に、誰かに迷惑がかかるわけじゃない。

 多くの場合「そんなこと気にするな」というのは、ある種の励ましの言葉として使われます。「そんなこと気にするな」という言葉に救われることだって、あるでしょう。だからその言葉がそんなに悪いものだとは、思いません。

 でも「気にしてもいいよ」という言葉にも、救われる。というか、救われました。

 結局のところ「気にしたくないのに気にしてしまう自分」というものに、かなり悩まされているんじゃないだろうか、と思うのです。だから「気にしてもいい」と思うと、それが「気にしてもいいことを気にしている自分」になるので、自分に対する嫌悪感が少し薄れるんじゃないか、と。

 もちろん「気にしてもいい」と思ったところで、気になるあれこれはなにも解決しません。どうしてフラれたのかも、どうしてバイトに採用されなかったのかも、メールの返信がこない理由も、わかりっこありません。

 あの人に嫌われているかどうかを知る術はなく、この先なにひとつ失敗しない方法も、この先だれからも怒られない方法も、ありません。

 フるかフラないかを決めるのは元恋人であったし、採用するかどうかを決めるのは企業であった。どちらも、わたしが決められることではありませんでした。

 メールの返事を出すか出さないかを決めるのはあの人であり、わたしがコントロールできることではありません。それに、この先も返事がこないかどうかは、わかりません。

 あの人がわたしのことをどう思うかは、あの人の自由です。好くのも嫌うのも、あるいは興味を持たないのも、あの人の自由。しかも「好こう」と思って好ける、とか「嫌おう」と思って嫌える、とか、そういうものでもありません。

 もちろん「前向き」にできる行動も、いろいろ考えることはできます。たとえば「元恋人にフラれた」ということについては、

  • ヨリを戻すためにできることをする
  • 新しい恋人を見つけるためにできることをする
  • 恋愛はしばらく(それか、永久に)やめて、仕事や趣味に打ち込む

 というような選択肢が思いつきます。

 でも、世の中にはやっぱり、どうにもならないことや、どうしようもないことも、たくさんあります。

 それに、ヨリを戻そうが新しい恋人を見つけようが、あるいは仕事や趣味に打ち込もうが「その人にフラれた」という事実が消えるわけではありません。

 もう大丈夫、もう気にならない、そう思って過ごしていても、忘れたころに突然「なんでフラれたのかなあ」と、またぶり返してくることだって、あるかもしれません。

 だったら、気になってまう気持ちにむりやりふたをして「前向き」に行動したり考えたりするより「なんでだろう、なんでだろう」って気にしちゃえばいい。

 そもそも、気になってしまうのも無理はありません。現に、気になってるんですから。

 他人の思考は当然のことながらコントロールできませんが、自分の思考もけっこうコントロールできないものです。だからもう降参して「そうなんです、気になるんです」って、自分に素直にそう言ってしまえばいい。

「どうしても気にしてしまう」のではなく、ただただ「気になる」だけなんです。気になるんだから、そのまま、気になるままにしておく、それがむしろ自然なことなのかもしれません。

 気にしたくないのに気になってしまう。もしもそのことに悩んでいるなら「気にしてもいいよ」と、自分に向かって言ってみてください。ひょっとしたら、少しだけ気持ちがラクになる、かもしれません。